2006年1月のライブドア事件は、その副産物として「ライブドアショック」という市場の大混乱を引き起こしています。
ライブドアショックとは、どのような混乱でなぜ起こったのでしょうか。
私はちょうどビギナーズラックで調子に乗り、大きく賭けたところに事件が起き、酷い目に会いました。
当時はショックすぎてどんな事件か調べる気も起きませんでしたが、今回落ち着いて調べたことで、ホリエモン以外の「黒幕」の姿が見えてきました。
7分ほどのボリュームです、ぜひ最後までおつきあいください。
そもそものライブドア事件の経緯について知りたい方は次の記事をチェックしてください。
ライブドアショックの経緯
まずは当時市場で起こった事をまとめます。
2006年1月16日
午後6時半ごろ、ライブドアに家宅捜査が入る。
2006年1月17日
市場は朝から大幅下落、ライブドアが上場している東証マザーズは-11.7%となりました。
ただ、東証一部銘柄で構成する日経平均やTOPIXは午前の終りにかけて値を戻してきていました、所詮1銘柄の事件です。
ところが、午後に入ってマネックス証券がライブドア株およびその関連会社の担保能力を予告なく「掛け目ゼロ」に変更することを利用者に通告!
市場は一気にくずれます。(マネックスショック)
結局、日経平均やTOPIXもマイナスで取引を終え、ライブドア関連7銘柄(※1)はストップ安となります。
(※1)ライブドア、ライブドアマーケティング、セシール、ターボリナックス、ダイナシティ、メディアエクスチェンジ、ライブドアオート
2006年1月18日
株式市場全体に個人投資家などからの大量の注文が殺到、午後から異例の「全銘柄取引停止」措置
2006年1月19日
この日から4月24日に解除されるまで後場の立会開始時刻が1時からと30分短縮する措置が取られることとなりました。
日経平均やTOPIX、マザーズ指数もようやく上昇。
ライブドアとライブドアマーケティングは、3連日のストップ安
結局、ライブドア株は1/17から6連続ストップ安!
696円から137円まで80%下落しました。
2006年1月20日
この日も平穏で市場はようやく落ち着きを取り戻すが、新興市場はこの後リーマンショックまで一度も高値を更新することなく下落の道を歩むことになる。
その後、2006年3月13日、ライブドア株の上場廃止決定。4月14日、上場廃止。
✓ ライブドアショック前後の株価指数推移
赤:JASCAC平均(新興市場)
緑:日経平均
青:TOPIX
✓ 主要指数
日付 | 日経平均 | TOPIX | 東証マザーズ |
1月17日 | -2.84% | -2.31% | -11.7% |
1月18日 | -2.94% | -3.49% | -12.08% |
1月19日 | +2.31% | +2.90% | +5.50% |
ライブドアショックの真犯人とは
さて、これだけの大打撃を市場にあたえたライブドアショックですが、果たしてすべてホリエモンが悪いのでしょうか。
この件にはホリエモンの他に2人の容疑者がいます。
① 検察犯人説(国策逮捕)
これまで経済犯罪で捜査のメスが入った企業というのは次のようなケースでした。
- 大量の負債を抱えているのを隠蔽していたことが露見した企業
- 破綻した企業
つまり、株主が損害を受けたり、社会に悪影響を与えた会社に対して、事後に制裁のために捜査が行われるという順番です。
ライブドアのように生きている企業に強制捜査が入るのは初めてです。
むしろ検察は経済活動に影響を与えることを嫌うため、本件以外では現在に至るまで類似のケースはありません。
また、市場に冷却期間与えるために金曜日に捜査が行われるのが通例でした(土日に冷静になれる)
それが、月曜日に行われた結果、市場はパニックになり東証の機能がストップするような事態を引き起こしてしまいました。
検察がライブドアにダメージを与えるために市場を利用したとしか思えません。
② 意外な黒幕
もう一つは、アメリカの投資ファンドとヘッジファンドが仕掛けたとの説です。
実際、1/17の午前の終りにかけて市場は落ち着きを取り戻しかけていました。
そこにマネックス証券の担保能力0で市場は大混乱となります。
その動きに黒幕の影が。。
この説については、別記事「 ジョン・メリウェザー | 失敗を失敗と思わず失敗 |ライブドアショックの黒幕 」でまとめております。
本記事の結論、ライブドアショックの真犯人
①と②から本記事の結論は、次のようになります。
- 自身の思惑以上に市場の混乱を引き起こした「特捜検察」が主犯
- 意図的に市場の混乱を広げて利益を得た「外資ファンド」が従犯
後にホリエモンは語っています。
罪に問われている事象も含めて、ライブドアが行ったことで、困っている人はいなかった。
むしろ、検察の仕打ちより「困る人」が生まれた。
「生きた企業に対して、月曜日に強制捜査して、市場の大暴落を引き起こす。」
一体何の権限があって、そんな事ができるんだ?
ライブドアの株主たちの怒り
ライブドアショックで被害を受けた多くの株主達は激しく怒りました。
ホリエモンへのバッシングや恨みつらみが止みません。
大抵の株主は泣き寝入りするしかありませんでしたが、一部の株主は違いました。
ライブドアを提訴したのです。
総勢3340名が、粉飾発覚による株価下落分の損害賠償として、193億円の支払いを求めました。
東京地裁で1審判決が出たのは2009年5月、請求金額は経過利息で230億円に膨れ上がっていた。
この判決では、下落幅 (※)の585円のうち200円しか認められませんでした。
(※)下落幅の根拠、以下の二つの差額
・679円 :強制捜査前1カ月平均株価
・94円 :上場廃止時点の終値
この判決でも実損額を回収できる投資家も結構いたため、高裁への控訴に臨んだのは全体の約半数。
2年後の2011年11月に出た高裁判決では、大幅に引き上げられ550円という判断が出ます。
この時点で和解をせず居残っていた投資家は228名に減っていたのだが、49名まだ納得がいきませんでした。
さらに最高裁への上告で満額獲得を狙い、めでたく満額の獲得に至るのです。
ライブドアから株主に総額2億7000万円の賠償金が支払われています。
しかし、実はもっと効率的に甘い汁だけ吸った人たちがいました。
モルガン・スタンレーやゴールドマン・サックス、ドイツ銀行などの外資系投資銀行と一部のヘッジファンドです。
当時、ライブドアは現金など含め換金可能な流動資産だけで1500億円前後も保有し、資産だけで1株当たり約250円の解散価値はありました。
これに目を付けた外資系のハゲタカ・ファンドは、1株70円前後、つまり実際に持っている資産の3分の1以下でライブドア株を買って大儲けしたのです。
上場廃止でパニックになった個人投資家が投げ売りして、暴落したライブドア株を底値で買って大儲けしたわけです。
結局、堀江社長率いるライブドアがフジテレビとのニッポン放送株の戦いで戦利品として手に入れた巨額の現金は、こうやって最後はハゲタカの手に渡ってしまったのでした。
(注)ハゲタカという動物はいません。ハゲワシ類やコンドル類の俗称です。
ライブドアショックでショックを受けないですむ方法
「額に汗して働く人、リストラされ働けない人、違反すればもうかると分かっていても法律を遵守している企業の人たちが、憤慨するような事案を万難を排しても摘発したい」
事件の約1年前、2005年4月の東京地検特捜部長の就任記者会見での発言です。
この言葉は、ライブドア事件の予告だと噂されています。
この時、すでにライブドアへの捜査は行われていましたから、あながち嘘ではないでしょう。
ただ、本当にこのような信念で「摘発」を行ったのであれば、その結果、汗水たらして働くたくさんの個人投資家の財産が失われたのはとんでもない皮肉ですね。
しかも影響の大きい月曜日に捜査したし、個人投資家に人気銘柄だったのでどうなるかくらい予想ついただろうに。。。。。
愚痴はつきませんが、前を向きましょう。
さて、どうすれば、このような事態に対応できたのでしょうか。
答えはシンプルです。
- 一つの銘柄でなく、なるべくたくさんの銘柄に分散投資する(マザーズはダメだったが、日経平均はその後持ち直した)
- さらに株だけでなく不動産・外貨貯金・外国株など投資対象も分散する。
- 投資は、余裕資金でやる
いくら業績がよく、資産も豊富で、将来性抜群の銘柄に投資していてもライブドアショックのような市場全体を揺るがすような事件が起こった時には無傷でいられません。
それ以外でも天災や突然の経済政策の変更、事件など予測不能の事態により資産が影響を受ける事はありえます。
この事件が教えてくれるのは「株は元本保証ではなく、突然損する事もある」と言う当たり前の事です。
それを覚悟し、上記のような対策をすれば、私のように資産の8割を失うような失態を犯すことはありません。
このように考え、不測の事態が起きてもいいようにかまえておく事が重要ですね。
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そもそも「ライブドア事件」が起きなければ「ライブドアショック」もありませんでした、次の記事では事件自体の黒幕に迫っています
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参考資料
本記事作成にあたり次のサイト・本を参考にさせていただきました。
◆書籍:
徹底抗戦
検証「国策逮捕」 経済検察はなぜ、いかに堀江・村上を葬ったのか
◆Webサイト:
(おしまい)