未来を担う若手人材の育成のため「孫正義育英財団」を設立しているソフトバンクグループ会長兼社長の孫正義さん。
ご自身はどのような教育を受けてきたのでしょうか?
孫家からは、パズドラのガンホー創業者の孫泰蔵さんも出ています。
2人の成功者が口をそろえて言うのは「オヤジは最高の教育者だった」
父親・三憲さんの教育法から「天才の育て方」を学びましょう。
孫家の教育①『高い志を持たせる』
孫家の教育法の1つ目は、「高い志」を持たせること。
三憲さんは、決して裕福でない家庭環境から、最盛期にはパチンコ店20店経営、不動産、焼き肉屋、消費者金融、ゴルフ場を経営し、年商100億円まで登りつめた凄腕事業家です。
しかし、子供には次のように語っていました。
正義、俺の姿は仮の姿だ、俺は家族を養うために仕方無しに商売の道に入ったけど、お前は天下国家といった次元で物を考えてほしい。
「小さな欲望に走るな、金のために人生を過ごしちゃいかん、銭儲は恥ずかしいことだ」
実は、孫家は武人や文官や学者の多い家系でした。
三憲さんも父の鍾慶さんから「どんなに貧しくても、プライドだけは忘れちゃいかん」と言われ育てられてきました。
「うさぎの行商でお金を稼いで浮かれて自慢していると、鍾慶さんは食べないで下駄を持ってきて頭を殴られた」なんて事もあったそうです。
商売が軌道にのる前の貧しかった時期、三憲さんは長男と正義さんを伴って障害者施設に行きました。
そこでお手伝いをし、出来る範囲の寄付して、自らが手本となり「正しいと思う事」を実行する姿勢をみせてくれたそうです。
幼少期よりそのような父親の姿勢と言葉を見聞きし育った孫正義さんは「情報革命で人々を幸せにする」という大きな志を持つにいたりました。
目先の金儲けに走らず、「大義」を掲げて事業に取組み、行動してきました。
- 日本に安いインターネットを届けるために無謀と言われながらブロードバンドに参入
「失敗してもその結果、日本が発展するなら本望だ」 - 東日本大震災時の行動
⇒義援金として個人で100億円寄付
⇒部下が止めても福島にいっちゃう(賛否あり)
⇒震災孤児ユーザには他社でも料金無料化 - 300年続く起業を目指す
人類の未来への貢献を掲げている「孫正義育英財団」なんかは正に利益にはならない大義のための活動ですよね。
この目先の損得にとらわれない姿勢が、結果としてソフトバンクに富をもたらし、発展させてきました。
孫家の教育②『考えさせる』
2つ目は「考えさせる」こと。
子供たちに考える力をつけさせるため、三憲さんは様々な工夫をしています。
答えのない質問をする
「あの踏切が青なのに通って事故にあったとしたら、なぜだと思う?」
このように、わざと答えようがない質問をして、考える力をつけさせていました。
常識を疑わせる
泰蔵さんが小学校2、3年のころ、今日学校であったことなどを話していると三憲さんから驚きの発言が飛び出します。
「ばってん、泰蔵ね。学校の先生は、時々うそを教えるぞ。先生の言うこと聞くなよ」
泰蔵さんは大ショックを受けたそうです。
子供にとっては絶対権力者の先生の言うことですら否定することで、人の言うことを鵜呑みにせず、常識を疑い、考えるように促したのでした。
子供でも子ども扱いしない
「喫茶店を繁盛させるためにはどうすればいいか?」小学生の孫正義少年に問いかけ、出てきた「コーヒー無料券」のアイディアを採用して喫茶店を繁盛させたエピソードは有名です。
また、泰蔵さんが子供のころには、新規パチンコ店の下見につれだして「この土地でパチンコ店を開こうと思うがどう思う?」と質問していたそうです。
どんな意見でも真摯に聞くとの思いもあったと思いますが、真の狙いは子供に考えさせる癖をつける事。
子供扱いせずに接することで、子供もその気になり頭を使ってくれます。
自らの背中を見せる
三憲さんの商売の鉄則は、「商売は人にならうな」「人にならわない、人と同じことはしない」
その立上げ方や経営方法において、常に常識破りの独特な経営モデルを編み出してきました。
- ヤミ焼酎の安全性を示すために、中学生の自分が飲んで見せる。
- その地域の酒好きのおやじに一升瓶1本をタダであげる代わりに2本分を売ってもらう。
- 釣り堀で、黒い鯛の中に数匹赤い鯛を混ぜて釣り上げたら1万円サービス
父親の姿勢は自然と子供たちに引き継がれていきます。
小さい時から考える癖がついていれば、困ったときにスッと知恵が出てくる
このような「考えさせる教育」から、他にはない経営方法や商品を生み出す、事業家2人が誕生しています。
DIAMOND onlineの記事「「孫正義・孫泰蔵を生んだ理想の教育「孫家の教え」とは」によると、孫正義さんは、自分より優れている分野の専門家から提案やアドバイスを受けても、「いまいちだな」とか平気で言って、ああでもない、こうでもないと自分が腹落ちするまで考え抜くのだそうです。
また、会議の最終段階で案をひっくり返すことがよくあるとか。
それほどギリギリまでゼロベースで考えるから、斬新なアイディアが出てくるのです。
孫家の教育③褒める
正義さんと泰蔵さんは幼少期から褒められて育ちました。
ご飯を食べるときに箸を持つだけで、「正義、お前は天才だな!」とほめ殺し状態だったそうです。
とにかく褒める、とことん褒める。
正義さんは小学生以降で父親に怒られた記憶がないとか。
名著「嫌われる勇気」で紹介されているアドラー心理学では、褒めることは「褒められることに依存する人間を作ってしまう事からNG」とされていて、物議をかもしていますが、孫家には関係ありません。
褒めて、褒めて、「2人の大起業家が誕生」という結果がでています。
天才と言われて育ったせいで、地元のブリジストンだろうがトヨタであれ、松下であれ、自分が一生かけて懸命にやれば必ず抜けるという根拠のない自信があった。
コツは親が心から子供を天才と信じ込み、言い続ける事。
親も子供を天才と言い続けることで自己暗示がかかり、本当にそう思ってくるという面もあるのではないでしょうか。
「絶対肯定の子育て 世に名を成す人は、親がすごい」ではピアニストの辻井伸行さんやGMOインターネット社長の熊谷正寿さんなど、褒める教育で大成した人の逸話が多く紹介されています。
孫家正義を育てた天才教育
まとめると孫家の教育方針は3つです。
- 高い志を持たせる
- 考えさせる
- 褒める
この教育方針は「現代の魔法使い」落合陽一さんを育てた教育環境と非常に似ています。
天才の育て方には「共通点」があるようです。
AIと共存していくこれからの時代で人間に求めれるのは「考える事」と「決める事」
それらを育む孫家の教育は、正にこれから必要な教育ですね。
孫家の特殊要因
蛇足ですが、孫家の環境について補足したいと思います。
孫家には他の家とは違う特殊な点がありました。
それは「ハングリー精神を養う貧困」と「最高の教育を受けるための金銭的バックアップ」が両立していたことです。
「鋼鉄王」アンドリュー・カーネギーや松下幸之助さん、最近では前田雄二さんなど幼少期の苦しい経験をバネにして大成した偉人はたくさんいます。
孫正義も幼少期は「無番地」と呼ばれる豚と密造酒の匂いが立ち込める貧しいバラックで過ごしました。
雨が降ると井戸の水があふれて、汚水が家の中まで流れ込んできたとか。
さらに「在日韓国人」という出自のため、差別や就職の壁などに苦しみました。
その逆境が、孫正義の底力となっています。
ただ、孫家がずっと貧しく、満足な教育を受けられなかったかと言うとそうではありません。
父・三憲さんの事業の成功により、暮らし向きは上向き、正義少年の教育にはお金を惜しみませんでした。
- 教育環境改善のために引っ越し
- 九州でトップクラスの進学校に通わせる
- アメリカ留学させる、定期的に仕送り
ちなみに泰蔵さんも、進学校から2浪でに東大経済学部合格、2回留年の末に東大卒業としっかり?お金がかかってます。
この貧困も経験しているが、十分な教育を受けているという特殊な教育環境が、異能の事業化を生み出したバックボーンにあります。
貧困はマネできるものではありませんので、参考にできる点としては「教育にお金を惜しまない」、「やりたいということは何でもやらせてやる」ですかね。