インデックス・ファンドの勢いがとまりません。
2006年から2018年までで、1兆5000億ドル以上のお金がアクティブ運用のファンドからインデックス・ファンドに移動したと言われています。
あのウォーレンバフェットもインデックス・ファンド肯定派です。
低コストのインデックス・ファンドは、投資家の大多数にとって、最も聡明な投資だ
その他多数の人がインデックス・ファンドを推奨しています。
- 「お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方 知的人生設計のすすめ」の著者橘玲さん
- 資産運用を専門とした経済評論家・山崎元さん
- 中田のYouTUbe大学のお金の授業編
推奨されている理由は主に次の3点です。
- 投資家の手間が少なく、簡単に分散投資ができる
- いろんなファンドがあるが、長いスパンでみると結局インデックスのパフォーマンスを超えられていない
- アクディブ運用に比べて手数料が安い
このインデックス・ファンドという金融商品はアメリカ人投資家・ジャック・ボーグルによって作られました。
日経平均とか指数と同じように動くファンドでしょ?
誰でも考え付くんじゃないの?
そのように感じる人がいると思いますが、インデックス・ファンドが発明されるまでは、ファンドと言えば高額な手数料を取るものであり、気軽に利用できる物ではありませんでした。
その常識に風穴を開けたのがジャック・ボーグルなのです。
その偉大さは2010年にフォーブス誌が「過去1世紀に他のどの金融関係者よりも投資家のために良いことを行った人物」と評したと言えば伝わるでしょうか。
ただ、今日では称賛され続けているインデックス・ファンドも最初から認められていたわけではありませんでした。かつては平均的なリターンに甘んじるべしという考え方は異説とされ、インデックス並みを狙うファンドは『ボーグルの愚行』と馬鹿にされることが多かったのです。
本記事ではジャック・ボーグルの名言と数々の失敗にもめげず、インデックス・ファンドを開発するまでの経歴をご紹介します。
ジャック・ボーグルの名言
ジャック・ボーグルは様々な分野に対してコメントしており、その名言は心にささるものばかりです。
投資家の心構え
- 投資家は自分がコントロールできるもの(例えば手数料や税金)をコントロールし、コントロールできないものは諦めるべき
- 投資の95%は運で残りの5%が技術だ。98%が運で2%が技術かもしれない
- 時間は友だ。衝動は敵だ。
- 1024人を一部屋に集めてコイン投げをしてもらう。そのうち一人が10回続けて表を出したら、「なんてラッキーな男だ」と言うだろう。ところがファンド業界では「すごい天才だ」と言われる。人ではなくゴリラにやらせても結果は全く同じだ。
インデックス・ファンドの良さを訴えるもの
- 干し草の山の中から1本の針を見つけ出そうとするな。干し草の山自体を買え。
- とにかく株式市場を全部買え。一旦株を買ったら、株式市場というカジノからは離れて、そのまま放っておきなさい。市場全体が入っているポートフォリオを永遠に持てば良い。インデックスファンドの役目はまさにそれだ。この投資哲学はシンプルで洗練もされている上に、ベースとなる数式は否定のしようがない。しかし、この規律を守ることは簡単ではない。
- 長期に渡って株式市場を幅広く保有することは勝者のゲームだ。一方、株式市場を上回ろうとすることは敗者のゲーム。
- 航路を守れ
人生の教訓
- 価格変動に合わせて一日中売買し続けるなんて時間の無駄だ。そんなことより、子供を公園に連れていくか、妻と外食する方がよっぽどマシだ。
- ポートフォリオをいじるのは、人生におけるイベント時で、相場が上下した時ではない。
- お金はゴールではなく、ゴール達成の手段と考える。
ジャック・ボーグルの経歴
ジャック・ボーグルがこれらの名言を自信を持って発信できるようになったのは、50歳を過ぎてからでした。そこに至るまでには苦難の歴史がありました。
ウェリントン社での試練
1951年ボーグルは「ファンドは市場平均を超えると主張すべきでない」と卒業論文に書きました。
ファンドの過去のパフォーマンスを調べた結果、毎年1.6%ずつインデックスに負けている事を発見したというのです。
その論文が同じ大学の卒業生だったウォルター・モーガンに認められ投資会社ウェリントンに入社することになります。
ウェリントン社の提供するファンドは堅実な運用をする事がウリで1929年の大暴落の前に資産の38%を現金にしておき、大恐慌を乗り切るなど、リスク管理にたけていました。
ボーグル君、君が後継者だ
モーガンに認められたボーグルは順調にキャリアを積み上げていきます。
しかしボーグルがキャリアアップして行くとともに、ウェリントン社の調子は下降してきました。最大の失敗はTDL&Lと合併し極端なアクディブ運用を取り入れた事でした。
1960年代の中盤から株式市場はかつてない活況でアクティブ運用が全盛期でした。ボーグルはその流れにのってしまったのです。
しかし、当時主流とされたアクディブ投資は1969年にダウが18カ月で36%さがった下落相場に耐えられませんでした。
あってはならない不始末だ。「力強い攻撃」は「防御力」ゼロだった...
1970年、ボーグルがCEOになるころには運用資産は減少し続け、全盛期の75%まで落ち込んでしまいました。
躍進 バンガード社設立
1974年、経営方針で対立しボーグルはウェリントン社をクビになります。窮地にたたされたボーグルは、16か月かけて取締役会を説得し、バンガード・グループを設立します。
ウェリントンでの失敗を反省し、新しい金融商品を研究していたボーグルはある事に気付きます。それは
「過去30年でS&P500種指数の上昇率11.3%だったのに対し、アクティブ運用ファンドの平均リターンは9.7%だったのです。」
難解な運用をして高コストでリスクを取っても結果が出ていない、それよりも市場平均を目指す運用をすれば、低コストで平均以上のリターンが得られる。
そのような考えで生みだされたのが「インデックス・ファンド」でした。
このファンドが画期的だったのは、投資家から高額な信託手数料を取り、運用会社の利益を確保するのが当たり前だった時代に、ブローカーを通さないなどの施策で経費率を年率0.05%以下に下げたことでした。自らの利を捨て、とことん投資家目線でファンドを作ったのです。
インデックス・ファンドの父
世界初のインデックス・ファンドは1976年より運用を開始しますが、最初から投資家の支持を得たわけではありませんでした。
その頃は後に「失われた10年」と言われる年の締めくくりの時期で、株価は20年前と変わらない水準で低迷していましていて、1976年に設立した最初のインデックスファンドは目標販売額の7%しか集まらなかったのです。
また、前例のないファンドは他のファンドマネージャなど投資界から馬鹿にされていました。
インデックスと同じ成績を目指してどうするんだ?
そんな考えだから信託手数料もちゃんと取れないんだよ
ただ、成績は好調で資産運用額は10年間で6億ドルまで拡大しました、ところがインデックス・ファンドは中々世間に広まりませんでした。
ボーグルの「投資家に余計なコストをかけずに米国株全体に投資するのと同じ効果を得られる」との考えは徐々に評価されていきます。
実際、1976年から2012年までのボーグルのファンドのリターンは年率10%で大型株ファンドの平均9.2%を上回っていたのです。
インデックスファンド資産運用額は、その後の10年で6億ドルから910億ドルと大躍進を遂げました。 そして現在(2019年)には資産運用額は4000億ドルとなっています。
ボーグルの正しさが証明されたのです。
偉大な経済者であるポール・サミュエルソンはインデックス・ファンドについて次のようなコメントをしています。
ボーブルのこの発明は、車輪、アルファベット、グーテンベルグの印刷機、ワインとチーズの発明に匹敵する。 全く新しい発明です。
ジャック・ボーグルは2019年1月16日に89歳で逝去します、生涯を通じて投資家目線の施策により投資界の発展に尽力した功績から『インデックス・ファンドの父』と呼ばれています。
ウォーレン・バフェットは次のようにジャック・ボーグルをほめたたえています。
個人投資家のために最も貢献した人物の彫像が建てられるならば、ジャック・(ジョン)・ボーグルであるべきです。
初めのうちは、ジャックは投資・運用業界から嘲笑されていました。
しかし今や数百万人もの個人投資家が、ジャックの方法で他の方法で得るよりも遥かに優れたリターンを得てきたという事実を知って、ジャックも満足している事でしょう。
彼は多くの個人投資家と私自身にとっての英雄です。
最後に
ボーグルがインデックスファンドを発明したのは47歳です。その歳まで失敗してきても偉大な功績を残した人がいると言うのはおじさんとしては勇気づけられます。
人生には、あえて後ずさることによって大きく飛躍できるときがある
また、次の記事では、2人の著名な投資家の主張を軸に、インデックス・ファンドの是非について論じています。
参考資料
本記事作成にあたり次のサイト・本を参考にさせていただきました。
◆書籍:
インデックス投資は勝者のゲーム──株式市場から確実な利益を得る常識的方法
ビッグミステイク レジェンド投資家の大失敗に学ぶ
◆WEBサイト:
バンガード創業者 ジョン・ボーグル逝去、その功績と人生
- 本カテゴリの記事は基本的に主人公寄りで書いています。
- 極力資料に基づき記載していますが、会話の内容など一部脚色しています。
(おしまい)