堀江貴文と孫正義、日本を代表する起業家のお二人。
ただ、社長としてはと大きな差が出ています。
ライブドア :社長逮捕で上場廃止
ソフトバンク:時価総額15兆円の巨大企業
いったい何がこれだけの差を生んだのでしょうか。
- ホリエモンと孫正義の意外な接点
(ITバブル、ライブドア買収、プロ野球買収、テレビ局買収、LINE) - 2人の起業家としての共通点
- ホリエモンと孫正義の明暗を分けた、たった一つの要素
8分ほどの内容です。ぜひ最後までお付き合いください。
ホリエモンと孫正義の出会い
2人の出会いはゴールドマンサックス在日法人の代表取締役社長・持田昌典さんの紹介です。
孫さんと堀江さんはいつも軽い話で、仕事の話はあまりしないそうです。
うちに娘がいるんだけど、どうだ?
こんな冗談とか世間話程度のようです。
ホリエモンから見た孫さんの印象は「いいオッチャン」
これだけ聞くと2人の間にはたいした関係はなさそうですが、二人の経歴を紐解くと浅からぬ縁が見えてきます。
弟が同級生
孫正義さんの弟の泰蔵さんとホリエモンは久留米大学附設中学校・高等学校の同級生、なんと大学も東大で一緒です。
ただ、弟の泰蔵さんは2浪していて東大の入学年度は違いますし、ホリエモンは東大を中退しています。
ホリエモンの高校の同級生には、その他にも著名人がいます。全員東大卒です!
三木雄信:
ソフトバンクで孫社長の右腕とした活躍後、独立。英会話教室TORAIZなどを運営するトライオン社長
古賀篤:
大蔵省を経て、現在は衆議院議員を3期務める。
ちなみに、孫正義さんも同じ高校に入学しましたが、中退しアメリカに留学しています。
ITバブル
2000年前半、ソフトバンク・ライブドア(当時はエッヂ)共にITバブル崩壊の洗礼を受けています。
それまではIT企業ということで、チヤホヤされていましたが一転、世間(株主、顧客、銀行)から白い目で見られることになります。
そして、何とか黒字に持っていこうと上場資金を使ってM&Aに走ったのがホリエモン。
一方、孫正義さんは、なぜか闘志が沸いてきて、ソフトバンク史上最大の挑戦といえるブロードバンド参入を宣言し、巨大企業NTTに挑みます。
ライブドア買収
2002年ホリエモンのエッヂ(当時の会社名)が、破綻したライブドアを買収するときに、競ったのがソフトバンクグループのヤフーです。
IT界隈でおやじと慕われるヤフーの佐藤完さんが間に入り、ヤフーに広告を出すことを条件にヤフー側は撤退しました。
この後、ポータルサイトという武器を得たエッヂは、既に名前を知られているライブドアに社名を変更。
ポータルサイトの知名度向上の思惑もあり、プロ野球参入、フジテレビ買収と突き進んでいきます。
ライブドア買収時にソフトバンクが本気だったら、歴史は変わっていたと言えます。
プロ野球買収
2004年6月、ライブドアは記者会見で近鉄バッファローズ参入を表明します。
合併してチームが減るとプロ野球界が衰退し、日本社会の損失になります。
会見でも開かないと、球団買収の正式オファーすらさせてもらえない。
ただ、ホリエモン=ライブドアは、不遜な態度も手伝って、プロ野球のオーナー達から拒否反応を受けます。
ベンチャーだか便所だか知らんが・・・・
ところが、球団を減らし1リーグ制にするとのオーナー側の思惑はファンや選手の思いとは乖離しており、ワイドショーなどはホリエモンをヒーローのように連日報道しました。
ホリエモンが世に知られたのはこの時です。
しかし、参入にはオーナーの承認が必須であり、嫌われたホリエモンは2004年11月のオーナー会議で楽天に敗北してしまいます。
一方、携帯電話への参入を考えていたソフトバンクもブランドの知名度向上のためプロ野球球団オーナーの座を狙っていました。
やはり最大の障壁は、巨人軍のオーナーで球界のドン・渡辺恒雄です。
ところが、孫さんは今風に言うと「持っている人」でした。
孫の側近の後藤芳光さんの父親がナベツネの後輩記者だったのです!
その縁を活かして、根回しに成功。
その他オーナーや銀行などとの交渉も無難にこなし、2004年12月、楽天とライブドアが争っているのを横目にあっさり参入を決めてしまうのでした。
ちなみに、後藤芳光さんは現在、福岡ソフトバンクホークス球団社長兼オーナー代行です。
テレビ局買収
孫正義の場合
先に参入を検討したのは実はソフトバンクでした1996年にニューズ・コーポレーションと組み、テレビ朝日の株の21%を取得、筆頭株主となりました。
ところが、想定以上の反発があると、野生の感で危険を感じ取ったのでしょうか。
あっさり撤退を決め、取得金額で売却します。
ホリエモンはこの判断について最近の動画「孫正義さんについて語りました」で絶賛しています。
素晴らしい判断
自分の過去への自虐が含まれているように感じるのは私の穿った見方でしょうか。
ホリエモンの場合
孫正義の騒動から9年後の2005年、フジテレビ買収をはかったのがライブドアです。
手法は荒っぽく、ニッポン放送とフジの親子逆転のねじれ構造に目を付け、小さいが親会社のニッポン放送の株を取得することでフジテレビの支配権を得ようとしました。
夜間取引で一気に株を取得、35%を保持する筆頭株主に躍り出るとTOB(敵対的買収)を仕掛け一気に勝負を決めにかかります。
メディアは連日ライブドアを悪役として報道、ライブドアには猛烈な逆風が吹き荒れます。
仲介に入ろうとする人や降りるように忠告する人はたくさんいましたが、孫さんと違いホリエモンは諦めません。
そこにホワイトナイトとしてSBIホールディングスの北尾CEOが名乗り出ます。
野村證券OBで金融界の大物である北尾氏の登場で、事態は一気に収束に向かいました。
結局、ライブドアが降りてニッポン放送を売却することで手打ち。
ライブドアは知名度向上と400億以上の利益を得ますが、この買収劇ですっかり悪役にされてしまい、のちの逮捕の遠因になったとされています。
この件も関係あるのでしょうか、ホリエモンは北尾氏のことよく思っていないようです。
「ほんとマジこいつクソ」
「自分が一番倫理観ねーくせに、論語だの哲学だの表向きのカッコつけばっか」
「やってる事と言ってる事が矛盾してないんなら剛腕経営者として評価するよ。でもそうじゃないからカス」
ボロボロに言っています。
北尾吉孝と孫正義
ちなみにSBIホールディングスは社名に、SB(softbank)とついていますが、現在は関係会社ではありません。
元々は1995年に野村證券の取締役だった北尾氏を孫さんがソフトバンクにスカウト。
北尾氏は1990年代後半からソフトバンクの金融面を一手に担い、急成長を支えてきました。
しかし、徐々に自ら育てたSBI証券などの金融事業の独立色を高め、2006年12月にソフトバンクと完全に資本関係を解消(決別)しています。
SBIは「softbank investment」ではなく「Strategic Business Innovator」の意味に改めました。
SBIがZホールディングス(ヤフーを傘下に持つ)と事業提携するなど、孫氏と北尾氏の盟友関係は継続しているようです。
ただ、公の場で孫さんに対して批判的な発言をするなど、ぬるい関係ではありません。
正直に言って、孫正義さんは投資に向かない人
スマートフォン
2006年1月に証券取引法違反容疑による逮捕前、ライブドアには「ソニー買収計画」があったそうです。
ソニーの技術でスマートフォンを作る!
狙いは、テレビ、ゲームなど余計な事業は売り払い、ソニーの技術集中させスマートフォンのようなものを作ること。
iPhone発売が2007年でAndroidが2008年ですから、この時すべてが上手くいっていたらと思うと残念ですね。
一方、すべて上手くいったのが孫正義のソフトバンクです。
2006年、孫正義もスマートフォンの未来を予感していました。
iPodにiOSと携帯電話を組み合わせれば、すごいものができる
そこで旧知の仲だったジョブズを訪ね、構想を話すと、極秘にiPhoneを開発していたジョブズを口説き落とすことに成功。
日本での独占販売の約束を取り付けたのでした。
2006年、日本3位のボーダフォン日本法人を日本最大規模1兆8千億で買収すると、落ち目だったボーダフォンを立て直し大手携帯会社の地位を確保します。
その最大の原動力となったのがiPhoneやiPadなどのアップル製品の日本独占販売でした。
長期離脱
2人に共通しているのが、キャリアの中で長期的に休んでいた期間があることです。
孫さんは1983年、25歳の時に慢性肝炎で医者から「もって5年の命」と言われ、3年ほど入院しています。
絶望しましたが、チャンスと思い直し、3000冊以上の本を読みまくったそうです。
起業してからは忙しくて本を読む機会も減っていた孫さん、そこで得た知識が回復後の躍進の原動力となりました。
ホリエモンはライブドア事件で有罪が確定し、2011年6月から1年9ヶ月を刑務所で過ごしています。
初の刑務所の暮らしに最初は戸惑いましたが、すぐに慣れて、世間から取り残されないようにと、1000冊以上の本を読んだそうです。
大きなことをする人は、「切替える力」と「どんな状況でも、その時出来ることをやる胆力」が備わっているのですね。
ただ、仕事ジャンキーの2人は、置かれた状況ほど、おとなしくは出来ませんでした。
孫正義:
重要な会議や記者会見などの時は、病院を抜け出して参加、無理して病状は悪化。
ホリエモン:
収監後も面会スタッフを通して、メールマガジンの発行を継続しました。さらに本「刑務所なう」まで出版。
LINE
実はLINEはホリエモンが逮捕された後、ライブドアに残った社員たちが作ったアプリで、LINEの現社長も元ライブドア社員の出澤剛さんです。
そのLINEと提携し、東南アジアの「スーパーアプリ」のシェアを狙っているのが、孫正義さんです。
2019年12月、ヤフーとLINEは経営統合を発表、今後の動きが注目されています。
2人の起業家としての共通点
経歴が度々交差している2人ですが、共通点があります。
コロナ騒動での孫正義のエピソード
コロナ騒動真っ只中の2020年3月、孫正義さんはツイッターでこんなことを呟きました。
「検査したくても検査してもらえない人が多数いると聞いて発案したけど、評判悪いから、やめようかなぁ。。。」
孫さんはコロナ騒動への対策として「簡易PCR検査100万人分」無料提供プランをぶち上げたのですが、思いとどまりました。。
無症状なのに陽性と分かった人が医療機関に殺到し、医療崩壊を招きかねないとの助言を受け入れたのです。
ちなみに本件に関してはホリエモンも「やめた方がいいですね」とツイートしています。
孫さんは、取締役会でも「俺は2票分だからない」と発言するなどワンマンなところも見受けられますが、筋の通った部下の意見は聞き入れるそうです。
そのように自分に刃向かう「正しい意見を言ってくれる部下」を重用します。
また、歴代の社外取締役にもお飾りでなく自分を強く戒めてくれるような人員を置いています。
- 恩人であるシャープ副社長佐々木正
- 尊敬する日本マクドナルド創業者・藤田田
- 盟友ファーストリテイリング社長・柳井正
- アリババのジャック・マー
圧倒的な判断力と実行力と交渉力などの実力がありながら、下の人間や他人の言うことにも理があると見ると採用する度量は、得難い才能でしょう。
ホリエモンのQ&A
実はホリエモンも同じです。
「ホリエモンに何でも質問できる」なんてQ&A企画をよくやっていますし、ツイッターでもクソリプ返しをよくしていて、マメに返信する人として知られています。
手間ですし、なかなかできる事ではありませんが、そうやって一般の人の生の意見やニーズを吸い上げているのではないでしょうか。
ライブドア時代もワンマンと見られていましたが、部下とは同じ土俵で言い争いすることが多かったとか。
ただ喧嘩しても翌日にはケロッとしていて後腐れないので、風通しが良い企業風土が根付いていたそうです。
ホリエモンと孫正義の明暗を分けた、たった一つの要素
似たようなところがある2人ですが、社長としては、「逮捕で上場廃止」と「時価総額15兆円の企業」と大きな差ができています。
2011年、PRESIDENTの「好きな経営者ランキング」では、孫さんはトップ、ホリエモンは逆に「嫌いな経営者」のトップなんてこともありました。
2人の違いとは何なのか?
答えは「愛嬌」です。
ホリエモンと言えば「言いたいことは誰であろうとズバズバ言う」キャラクターです。
最近だと小池百合子知事など、目上の人であっても、激しくかみつく様子は度々ニュースになります。
反対に、孫正義さんは、若いころは「おやじ殺し」と言われるほど、目上の人に好かれるキャラクターで有名でした。
現在もスピーチで得意技としているのが自分の頭髪を使った自虐ネタです。
twitterでも度々さく裂しています。
この愛嬌と大きなビジョンを持ち熱く夢を語る姿に、交渉する人はついつい「この人と仕事をしてみたい」と思って肩入れしてしまうのです。
一方のホリエモンは、「自分弱みを見せる」などの自虐トークや「忖度」は大の苦手、それがモロに出たのが「球団買収の失敗」や「フジテレビ買収騒動」ではないでしょうか。
この「愛嬌」の違いが、2人の現在の距離となっていると思います。
日本は新参者に冷たい
「あんぽん 孫正義伝」では、孫さんがライブドア事件について本音を語っています。
事件を判断する立場にはないが、大企業だって堀江さんのようにある一線を越える事だってままある。
でもNTTデータや野村證券などの大企業だと新聞に2回3回乗るだけで済んでしまう。
関連記事 ライブドア事件の真相と真犯人
ソフトバンクも逮捕まではいかなくても、同じような道をたどってきました。
2004年ヤフーBBの顧客データ流出事件があり、マスコミから袋叩きにあっています。それ自体は仕方ないのですが、2年後にKDDIが同様の事件を起こしたときは、孫さん曰く「100分の1程度」しか騒がれなかったそうです。
日本は新参者に冷たいのです。
だからなおさら、新参者がのし上がるためには、少しでも上の人に取り入るためのスキル「愛嬌」が重要になってきます。
孫さんは在日韓国人でそのような差別については、幼少から何度も経験し、考え・生き抜いてきました。
その点でのビジネスでの困難はホリエモンの比ではなかったでしょう。
ただ、身につけた「愛嬌」などの生き抜くためのスキルは、孫さんの大きな武器となっているのです。
ホリエモンの構想
あのままライブドアが成長していたら、現在はもっと頻繁2人のコラボや競争が見られたでしょう。
しかし、ホリエモンが停滞しているわけではありません。
2019年9月のソフトバンクロボティクスの冨澤CEOとの対談で、自身の目指すプランを語っていました
堀江
94年ぐらいからコツコツ仕込んで98~99年にブレイクして。それでも一般の人たちはまだ知らなくて。そこから3~4年かかって、球団を買うとか言って初めて知名度があがったけど、それまでにじつは仕込みに10年ぐらいかかっているんですよ。冨澤
なるほど。仕込んでる時は、もちろん表には見えにくいし、先に爆発しそうなものを仕込んでいるわけだから。では、今はそういう時期になるんですか?堀江
そうですね。「ライブドアみたいな“普通の”会社をもう一回作らないんですか?」とよく聞かれるんですけど、一回やって手放したから飽きちゃってまして。今は、世界で知名度を上げるにはどうしたらいいかってことを考えて、そういうアプローチしかしてません。だからロケットをやったり、和牛をやったり。
ホリエモン×冨澤CEO、 同学年の2人が語るニッポンのロボットの未来
なんかワクワクしますね。
孫さんも相変わらず凄いエネルギーで活動してますし、2人が大きく交わるのはこれからなのかもしれませんね。
2人の活動のニュースを楽しみに待ちましょう。