ホリエモンが自身のyoutubeチャンネルでカルロス・ゴーン事件について7回以上にわたり語っており、話題になっています。
実は「ホリエモンの意見が聞きたい」とゴーン側からオファーがあり、2020年1月にホリエモンとゴーンさんの会食の予定があったそうです。
しかし、2019年の大晦日にゴーン氏は国外逃亡、当然会食はキャンセルとなりました。
逃亡については会食をセッティングした人も知らなかったそうですが、極秘逃亡計画のカモフラージュに利用された可能性が大ですね。
本記事はそんな事件に縁があり、検察に逮捕された経験のあるホリエモンの動画での意見を元にライブドア事件との類似点から見えてくる事件の真相に迫ります。
事件の前にゴーンの経歴を知っておきたい方は、カルロス・ゴーンの経歴【フランスの日産乗っ取り計画と日本政府の逆襲】でまとめておりますのでどうぞ。
そもそもゴーンはなんで逮捕されたの?
そもそもカルロス・ゴーンはどのような容疑で捕まったのでしょうか。ホリエモンの事件と比較する前にその容疑を確認しておきましょう。
ゴーンの逮捕容疑
容疑は大きく2つに分けられます。
①退職金の虚偽記載(1回目と2回目の逮捕容疑)
2011年3月期から2018年3月期までの役員報酬について、およそ90億円近くを過小報告した、有価証券報告書に記載されていなかったとの容疑です。(金融商品取引法違反)。
②特別背任(3回目と4回目の逮捕容疑)
A.サウジルート
自身の資産管理のために設立した会社で発生した通貨取引の損失 18.5億円近くを日産に移し替えたというものです。知人のサウジアラビアの友人が関与。
この取引は後に証券取引等監視委員会(SESC)に問題視され、結局は日産から再度ゴーン氏の元に戻されました。
B.オマーンルート
2012年からの7年間、中東オマーンの販売代理店に対して支払われていた38億円の資金の一部が、カルロス・ゴーンのクルーザー購入などの私的な目的のために流用されていた疑い
事件が発覚したときは、「外国から来た経営者が日本の会社を私物化し私腹を肥やしている」との論調でした。
ゴーン逮捕の妥当性
事件の詳細や状況がわかってくると、有識者の間では逮捕に対する疑問の声が出てきました。
①退職金の虚偽記載について
ゴーンがごまかしたとされる90億は退職金としてもらえる可能性がある金額で、ゴーン氏がもらっていたわけではありません。
ゴーン氏は「死亡テスト」という表現を使い、「もし私が今死んだら、記載されていない退職金は私の遺族に支払われるのか?」と指摘しています。
未来にもらえるかもしれない金額を有価証券報告書に記載するのは逆に株主の混乱を招きますし、むちゃです。
元検事の郷原弁護士は次のように述べています。
このような未払いの役員報酬の開示の問題で、刑事事件が立件されたことは私は異常な事態だと考えている。第一に、過去に役員報酬についての有価証券報告書への記載の問題での違反摘発事例がない。
もし仮に日産が問題があると判断したのであれば、取締役会で審議して有価証券報告書を訂正すればいいだけです。
東京大学の田中亘教授も私とまったく同じような意見を述べています。会社法、金融商品取引法の立場から考えればこのような結論になるのは当然だと思います。
②特別背任について
特別背任の2件は事実関係が不明確です。ゴーン氏がグレーな事をしていた事は間違いないのですが、これがあきらかに違法で即逮捕すべき案件かというとNOだと言えます。むしろかなりの無理筋です。
事実関係を明らかにするには、レバノンのGFI社など諸外国を調査する必要がありますが、レバノンはゴーン寄りの国で調査が難航し、立件は困難との見方が優勢です。
ホリエモンの事件との6つの類似点が示すこと
ゴーン事件がただの汚職事件ではなさそうだと世間が疑問を持ち始めた中で一番注目されたのが、ホリエモンの解説動画シリーズです。200万以上再生されていて、大きな注目を集めています。
その理由はゴーン事件とホリエモンが逮捕されたライブドア事件に共通点が多いため、ホリエモン以上に説得力のある解説ができる人は他にいない為です。
実際どれだけ似ているのか、類似点を上げていきます。
①上場企業の最高幹部がいきなり逮捕
両事件とも企業の現役のトップがいきなり逮捕されるという非常にインパクトのある始まりでした。
ゴーン事件:
2018年11月19日の午後、日産の社長経験者で現役の会長であるカルロス・ゴーンが突然の逮捕、世間に衝撃を与えました。
株価は現在までで当時の940円から500円と46%近く下落しています。(※業績の悪化などその他の要因もあります)
ライブドア事件:
プロ野球の買収騒動、フジテレビ買収、選挙出馬など世間を騒がし続けていたライブドアが2006年1月16日、強制捜査され数日後に堀江貴文社長が逮捕されます。
ライブドアは当時個人投資家に大人気だったため、翌日からの東京株式市場は大混乱、いわゆるライブドアショックを引き起こします。
売りが殺到し一時、全銘柄取引停止となるなど影響は市場全体に広がりました。
②無理目な逮捕容疑
ゴーン事件:
前項でも述べましたが、「退職金の虚偽記載」、「特別背任」共にいきなり逮捕するような事件かというと大いに疑問が残ります。
ライブドア事件:
「関連会社間で会計をごまかした」「有価証券報告書にウソを書いた」との容疑でしたが、他の企業のもっと規模が大きい事例では逮捕されていないなどその容疑は不可解なものでした。
③検察の誤算、一貫して容疑を否認
いずれも検察は当初の目論見が外れたことにより迷走・暴走していきます。
ゴーン事件:
最初の金商法違反による逮捕で、比較的簡単にゴーン氏、ケリー氏を自白に追い込んで国外にもうそのまま出てもらって事件が片付くという見通しを持っていたが、ゴーンとケリーは一貫して容疑を否認、別件の特別背任で無理やり逮捕せざる得なくなった。
ライブドア事件:
東京大学中退という堀江氏は所詮インテリだから脆く、検察が厳しく取締まればすぐに落ちるのではないかとの検察の見通しがあった。ところが、起訴にいたっても否認を貫き、一切罪を認めませんでした。そして捜査を進めても余罪が一切出てきませんでした。
④被害者不在
どちらの事件も逮捕されるまで誰も被害者、困っている人はいませんでした。
ゴーン事件:
役員報酬なのか、私的流用なのかとの話であって、PL(損益計算書)やBS(貸借対照表)には影響を与えません。つまり株主には何の不利益もなく誰も困っている人はいませんでした。日産の全体の損益からしたら数億円は微々たるものであり、取締役会で対処をしていれば、株価の下落など、ここまで大きな事態にはならなかったはずです。
ライブドア事件:
罪に問われている事象も含めて、ライブドアが行ったことで、困っている人はいませんでした。むしろ、市場が動いている平日に強制捜査するなど検察の仕打ちより「困る人」が生まれました。
⑤司法取引による誘導捜査
ゴーン事件:
法務部門担当の役員ハリ・ナダに近づき、司法取引での罪の軽減を盾に自白を取り、事件を有利に進めました。
ライブドア事件:
ホリエモン以外の幹部の宮内氏等に自身の横領の罪身を不問にする代わりに堀江氏に不利な証言を引きだした。
この日本の司法取引の問題点は、共犯者側のみがこの制度を利用して刑が軽くなる権利があり、ゴーンやホリエモンなどの主犯側には司法取引の権利がないということです。
つまり、主犯側は言われたい放題なのです。
⑥弁護士が一緒
ゴーン事件:
2019年2月、元検事の弁護士が辞任。「ロス疑惑」の三浦和義さん、「障がい者郵便制度悪用事件」の厚労省・村木厚子氏等、数々の有名事件を担当し、「保釈のスペシャリスト」「カミソリ弘中」と言われる弘中惇一郎氏が就任。
ライブドア事件:
1審・2審(控訴審)と続いた連続敗訴の後、弁護団も一新、弘中惇一郎氏が就任した。ちなみにホリエモンに弘中惇一郎氏を紹介したのは「ロス疑惑」の三浦和義さん。三浦さんは2008年にロサンゼルス亡くなっています。
違い
これだけ似ている事件なのですが、逮捕された時の本人の状況はかなり違いました。
ホリエモン:ライブドアへの強制捜査が先に行われ、勾留前に心の余裕や準備ができた。強制捜査中に弁護士から、「ここまで捜査が入ると逮捕・勾留は確実だ」、「寒いからダウンジャケットを着ていった方がいい」をなどのアドバイスを受けていた。
ゴーン:プライベートジェットで羽田に到着してすぐに、身柄が拘束され逮捕、そのまま東京拘置所へ。言葉もあまり通じない中108日間の勾留・取り調べが始まります。その衝撃と疲弊はすさまじかったと思います。
私でも孤独な取り調べはきつく精神安定剤の世話になった、私よりひどい状況で逮捕されたゴーンさんは相当きつかっただろう
共通点から導き出される結論
いかがでしょうか。共通点が多く、事件の解説者としてホリエモンが注目されているのも納得ですよね。ちなみにプライベートジェットを持っているという点も一緒です。
「ライブドア事件とライブドアショックの真相 | 堀江貴文 VS 特捜検察」でまとめていますが、本サイトではライブドア事件は検察の作った国策捜査で主犯は特捜検察との結論を出しています。
そして、両事件の共通点の中でも特に
- 無理目な容疑による疑問の残る逮捕
- 検察が逮捕するまで誰も困っている人がいなかった
- 司法取引による誘導捜査
この3点からライブドア事件と同様にゴーン事件も「何らかの意図」が働いた国策捜査だったと考えます。
ホリエモンはこの事件を次のように結論付けています。
本来、日産内で処理できる案件を意気地がない(チキンな)日産の幹部が検察にリークし処理しようとしたのが発端。検察は新しく出来た司法取引制度を大きな事件で使いたかったので協力した。
検察が協力した部分までは同意見ですが、本サイトではホリエモンと違い、検察ではなく「何らかの意図」を持った別の黒幕がいると見ています。
「ゴーン事件の経緯と真相【黒幕を特定する6つの理由】」で事件の真相に迫っていますので、ぜひご覧ください。
ゴーンはなぜ逃亡しなければならなかったのか
全項の結論のように逮捕されるような事案ではないのであれば、なぜゴーンさんはなぜ逃亡しなければいけなかったのでしょうか。
その理由には日本の司法制度の闇が関係しています。
高野弁護士の告白
カルロス・ゴーンの弁護をしていた高野弁護士がゴーン氏逃亡後の1月4日のブログで、ゴーンの逃亡直前までの様子を投稿しています。
一部抜粋します。
彼はなんどもこの同じ質問をした。そのつど私は日本の実務について、自分の経験に基づいて説明した。憲法や法律の条文と現実との乖離についても話した。
・・・残念ながら、この国では刑事被告人にとって公正な裁判など期待することはできない。裁判官は独立した司法官ではない。官僚組織の一部だ。日本のメディアは検察庁の広報機関に過ぎない。
しかし、多くの日本人はそのことに気がついていない。あなたもそうだ。20年間日本の巨大企業の経営者として働いていながら、日本の司法の実態について何も知らなかったでしょ。
考えもしなかった。
逮捕されたら、すぐに保釈金を積んで釈放されると思っていた?
もちろん、そうだ。
英米でもヨーロッパでもそれが当たり前だ。20日間も拘束されるなんてテロリストぐらいでしょう。
でもこの国は違う。テロリストも盗人も政治家もカリスマ経営者も、みんな逮捕されたら、23日間拘禁されて、毎日5時間も6時間も、ときには夜通しで、弁護人の立ち会いもなしに尋問を受け続ける。
罪を自白しなかったら、そのあとも延々と拘禁され続ける。誰もその実態を知らない。みんな日本は人権が保障された文明国だと思い込んでいる。
・・・公正な裁判は期待できないな。
それは期待できない。しかし、無罪判決の可能性は大いにある。
私が扱ったどの事件と比較しても、この事件の有罪の証拠は薄い。検察が無理して訴追したことは明らかだ。われわれは他の弁護士の何倍もの数の無罪判決を獲得している。
弘中さんも河津さんも、著名なホワイト・カラー・クライムの裁判で無罪を獲得している。だからわれわれを信頼してほしい。必ず結果を出してみせる。
私は思っていることを正直に伝えた。彼は納得してくれたように見えた。
しかし、手続きが進むにつれて、彼の疑問や不安は膨らんでいったようだ。
- 開示の方法に細々とした制限を課してくる検察
- 弁護人に対しては証拠の目的外使用を禁じる一方で、やりたい放題の検察リーク
- 弁護人の詳細な予定主張を真面目に取り上げないメディア
- 「公訴棄却申し立て」の審理を後回しにしようとする公判裁判所
- いつまでも決まらない公判日程
- 嫌がらせのようにつきまとい続ける探偵業者
彼は苛立ちの表情を見せながら私に質問してきた。しかし、徐々に質問の頻度は減っていった。
とりわけ、妻キャロルさんとの接触禁止という、国際人権規約に違反することが明白な保釈条件が、どんなに手を尽くしても解除されないことに、彼は絶望を感じていた。
これは刑罰じゃないか。一体いつになったらノーマルな家族生活を送ることができるんだ。
この正当な問いに私はきちんと答えることができなかった。「努力する」としか言えなかった。
クリスマス・イブの昼下がり、島田一裁判官が1ヶ月ぶりに認めた妻との1時間のビデオ面会に私は立ち会った。
二人はお互いの子どもたち、親兄弟姉妹その他の親族や友人、知人ひとりひとりの近況や思い出話を続けた。話題が尽きない。そろそろ制限時間の1時間が経とうとするとき、彼はノート・パソコンの画面に向かって言った。
君との関係は、子供や友人では置き換えることはできない。君はかけがえのない存在だ。愛してるよ、Habibi。
私は、日本の司法制度への絶望をこのときほど強く感じたことはない。ほとんど殺意に近いものを感じた。
返事はなかった。彼は私の存在などないかのように、次の予定を秘書と確認していた。
その1週間後、大晦日の朝、私はニュースで彼がレバノンに向けて密出国したことを知った。
まず激しい怒りの感情がこみ上げた。裏切られたという思いである。
しかし、彼がこの国の司法によって扱われてきたことを思い返すと、怒りの感情は別の方向へ向かった。実際のところ、私の中ではまだ何一つ整理できていない。
が、一つだけ言えるのは、彼がこの1年あまりの間に見てきた日本の司法とそれを取り巻く環境を考えると、この密出国を「暴挙」「裏切り」「犯罪」と言って全否定することはできないということである。
彼と同じことをできる被告人はほとんどいないだろう。
しかし、彼と同じ財力、人脈そして行動力がある人が同じ経験をしたなら、同じことをしようとする、少なくともそれを考えるだろうことは想像に難くない。
それは、しかし、言うまでもなく、この国で刑事司法に携わることを生業としている私にとっては、自己否定的な考えである。寂しく残念な結論である。もっと違う結論があるべきである。
確かに私は裏切られた。しかし、裏切ったのはカルロス・ゴーンではない。
抜粋しようとしたのですが、ほぼそのままになってしまいました。ゴーンさんの心情が切実に伝わってくるブログですね
ゴーンが出国を決意した理由
ゴーン逃亡後の1月13日に、元検察官の郷原弁護士がテレビ電話でゴーン氏と会話しました。
ゴーンさんは出国を決意した理由について次のように語ったそうです。
検察に言われて裁判所が突然意向を変え、特別背任の事件の公判の開始が当初の2020年9月の予定から、2021年か2022年まで大幅に遅れるということになったことだ。
これまで、妻と息子と会えない保釈条件について何度も変更請求したが、結局、少なくともその公判が始まるまで、妻と息子と会えないということがもうはっきりした。
ブログ中にもありましたが、確かにゴーン氏にとって極めて深刻な事態です。
- 奥さんをはじめとする家族と会えない
- 日産・ルノーの関係者と連絡がとれない
- それまで世界を飛び回っていたのに日本から出国できない
- 裁判がいつまでも始まらない、始まっても5年以上かかる事が予想される
- それまで、上記のような不自由な生活が続く
もちろん逃亡は犯罪ですが、本人の身になれば逃げるという選択肢があれば飛びつくのは当然と言えるでしょう。
逃亡前の郷原氏のインタビューで次のような主張もしています。
10億円以上の報酬でとやかく言われているが、私は2008年にGMから20億円のオファーがあった。間にはオバマ大統領がいるほどの正式なオファーだった。
しかし私はリーマンショックで疲弊していた日産やルノーを捨てる事は出来なかった。だからオファーは断った。
しかし、今思うとそれが非常に間違った判断だったと思っている。
日本/日産への絶望感からか郷原氏に次のようにも語ったそうです。
日産は2~3年内に倒産するだろう
ゴーン逃亡は誰の責任?
ゴーン氏の逃亡に対して、保釈の許可を出した裁判所やゴーン弁護団を避難する意見が一部の人から出ました。
東京地裁はカルロスゴーン被告にフランス旅券の携帯を許可していた。旅券は2冊有り、1冊を鍵付きケースに入れ、被告に預け、鍵は弁護人が保管する条件だった。鍵は誰がゴーン被告に渡したのか。或いは、ゴーン被告が勝手に持ち出したのか。何れにしろ、弁護人側の管理が杜撰過ぎる。
弁護人は、半ば意図的にゴーン被告を逃亡させたのか。そう勘ぐられても仕方無い。裁判はゴーン被告側が不利だった。しかし、海外に逃亡させてしまえば、敗訴は無い。
これに対してホリエモンは激しく反論しています。
相変わらずこの人馬鹿だな。弁護人に被告人の全ての動きを管理する義務はない。国内に留まらせる決定を出したのは裁判所でその為にはパスポートの携帯が必要なんだから仕方ないだろ。弁護人には努力義務はあるが騙されて逃亡される事まで責任は負えないだろ。
被告人の利益を最大限追求するのが弁護人の役目だ。例えば被告人が世間の大多数が極悪人だと思っている人だとしても。それが推定無罪の原則だろう。こんな刑事司法の基本中の基本すら理解してないものが県知事とかやってたと思うと寒気がするね。
この2人は2016年のバラエティ番組の企画をめぐり言い争いをした因縁があり、ホリエモンのいきなりのキツイ発言はそれが影響してると思われます。ちょっと東国原さんが可哀想ですね。
また、森まさこ法務大臣にも容赦のないコメントをしています。
ゴーンの逃亡は、出入国在留管理庁の大失態である。それなのに弘中弁護士の事務所に強制捜査が入り、マスコミがあたかも弁護士が逃亡に協力したかのように報じている!
出入国在留管理庁のボスは、法務大臣である森まさこさんです。本来、法務大臣を辞任するくらいの失態です。
それなのに彼女はあたかも弁護人が悪いような発言をしている。彼女は弁護士です、弁護人に逃亡の責任がないことぐらい知っているはずだ。
それを自分の責任を棚に上げて、ゴーンの弁護人を批判するなんて、森まさこは本当にサイテーだな。
避難されるべきは弘中弁護氏ではなく、森まさこ法務大臣あなただ!
日本の司法制度の問題点
今回のような検察の強引なストーリーありきの捜査の実行を許しているのが、ゴーン事件でもたびたび話題となる日本司法の問題点です。
主に次のような点が挙げられます。
- 人質司法
- 検察官が起訴した場合の有罪確率は99%超
- メディアと検察の協力関係
それぞれ見ていきましょう。
人質司法
最も問題にされているのがこの人質司法といわれる長期勾留と弁護士不在の取り調べです。
- 逮捕され被疑者となると10日間の勾留が決定
- たいてい延長で10日間足される、合計20日
- さらに、容疑が固まり起訴され被告人になると、起訴後勾留に制限なし(最初に2か月間の勾留、以降は1ヶ月ずつ延長)
検察が申請し、裁判所が許可する方式でそこで却下される可能性があるのですが、これまでの慣例では認められることが圧倒的に多いのが実状です。
勾留されると、弁護士の立ち会い=味方がいない中で連日取り調べを受けます。
法律や刑罰、勾留の仕組みも知らない中でいきなりその道のプロから厳しい取り調べを受けることになります。
友人にも家族にも会えず、人によっては職を失ってしまいます。極端に情報の少ない独房暮らしで、本人は消耗していきます。
司法では推定無罪が原則なのですが、刑罰が始まっているに等しい状態なのです。
海外では、人質司法 = 拷問ととらえられていて、日本は国際拷問委員会から6回も勧告を受けています。
釈放される方法が「自白すること」でこの仕組みが数々の冤罪事件を生んでいます。
海外との違い
アメリカでは、保釈によって釈放されるのは、裁判官の前で「無罪」の答弁をした被告人だけです。有罪の答弁をした被告人が保釈によって釈放されることはありません。
つまり、アメリカは日本の逆なのです。日本では、罪を自白しないと保釈が認められません。
ゴーン氏は、仮に日本ではなくアメリカで逮捕されたとしたなら、間違いなくその数時間後、どんなに遅くとも24時間後には釈放されていました。
- マイケル・ジャクソンは、14歳未満の少年に対するわいせつ行為の罪で逮捕されたが、その日のうちに、裁判官の前で無罪の答弁を行い、キャッシュで300万ドルの保釈金を積んで釈放されました
- エンロンの創業者ケネス・レイ氏は証券詐欺、銀行詐欺、虚偽報告など11の訴因で大陪審によって起訴されFBIに逮捕されたが、翌日裁判官の前で、全訴因について無罪の答弁をして、50万ドル相当の無担保債券を差し入れて釈放されました
日本では推定有罪?
ところが、ゴーン逃亡後、すぐに開いた記者会見で森まさこ法務大臣から驚きの発言がでます。
ゴーン被告は司法の場で無罪を証明すべきだ
この推定無罪の原則を無視した発言で全世界から批判を浴びました。
弁護士の間では「クビが飛ばなければならない」「森法相は弁護士のはず」「まさか」「誤報ではないか」とメールが飛び交ったそうです。
しかし、この発言が日本に推定無罪がない推定有罪が浸透している証拠だと指摘されています。
検察官が起訴した場合の有罪確率は99%超
日本では、逮捕後に検察官が起訴した場合の有罪確率は99%以上です。
ただ、警察が逮捕したケースでは、検察が起訴するまでに慎重に事を運び起訴率自体はは63%と議論の余地があります。
しかし、ゴーン氏やホリエモンのような特捜検察が逮捕するとほぼ100%起訴します。すると特捜が逮捕すると決めると99%以上有罪となることになります。
これでは裁判の意味がありませし、検察が間違って逮捕するようなケースでは取り返しがつきません。
推定無罪ではなく、検察の推測=有罪なのです。
ましてや、ゴーン事件のように「何らかの意図」があって逮捕された場合は、検察の思惑次第で自由に犯罪者を作れることになってしまいます。
ゴーンの弁護団の一員だった高野弁護士はこれを時間が逆転するルイス・キャロルの「鏡の国のアリス」に例えて皮肉っています。
鏡の国では、先に未来の刑罰が執行され、続いて刑罰を決めた裁判、そして裁判をもたらした犯罪が起こる。
いや犯罪は来ないかもしれない。
その人が結局罪を犯さなかったら?
それは実に結構なことではございませんの!
アリスは「犯罪なし」と犯罪ありを比較し「犯罪なし」こそ結構だとすることに反論はできない。
無論ますます結構でしょうね
メディアと検察の協力関係
検察が事件を作り、報道機関が報道し視聴率や発行部数を稼ぐ。
そんな癒着の関係が日本にはあります。
それは「テレビでは日本の司法制度の問題点、人質司法などはあまり報じられない」など検察寄りの報道からも見て取れます。
次のような逸話も残っています。
- なぜか検察の強制捜査の該当の場所にはテレビカメラが待機している
- ライブドアへの強制捜査では、NHKが実際のガサ入れよりも先に報道を流す失態を演じて、東京地検に大目玉を喰らった
検察は都合のいいように報道してもらうために、たびたび報道機関に捜査情報をリークするのです。
報道機関は、スクープが欲しいので検察の意向に沿うように報道する。これでは、世論が操作され、公平に判断をするための情報が人々に伝わりません。
前述のライブドア事件では、ニッポン放送買収事件でホリエモンに恨みがあるフジテレビが、逮捕のきっかけとなったメールを検察にリークしています。
安藤優子がゴーン会見場に入れない
2020年1月8日の午後10時、日本から逃亡したゴーン氏が各国のメディアに対してレバノンで会見を開きました。逃亡後の初のコメントが聞けるとあって非常に注目されました。
ジャーナリストが150人ほど招待されていましたが、フジテレビ関係者は含まれていませんでした。
安藤優子キャスターは、過去に数回ゴーン被告への取材経験があることから、会見の開かれるレバノンにアポなしで直撃、動向が注目されました。
...結果は撃沈!
日本で会見場に入れたのは、朝日新聞、テレビ東京、小学館のみでした。
会見で小学館の記者がなぜ一部メディアを招待しなかったのか質問すると次のような答えが返ってきました。
あなたが参加できているのは、客観的な見方ができる方と判断されたからです。正直に言って、プロパガンダを持って発言する人たちは私にとってプラスにならない。事実を分析できない人たちはプラスにならない。
ゴーンさんも日本の報道にはかなり思うところがあったようです。
ホリエモンのアドバイス
逃亡前、ホリエモンはゴーンさんに対して、こんなアドバイスを送っています。
ゴーンさんは現在65歳です。徹底抗戦で争うとこれから裁判で最高裁で判決がでるまで5年以上かかります、さらに裁判で負ければ実刑で5~10年くらってしまう。出所するときゴーンさん80歳超えている、下手した獄中死してしまう。
正直、嫌だと思うけど、罪をみとめるしかない
こんなことを言っていますが、ホリエモン自身が捕まった時は徹底抗戦でした。検察と取引も何もせず、一切罪を認めずに逮捕⇒裁判⇒有罪判決⇒刑務所⇒出所まで8年くらいかかっています。
その経験がある人の言葉であり、ホリエモンも若干当時を後悔しているのかもしれません。
しかし、この状況に対するゴーン氏の出した答えは、
うまくやりやがったな。
こっちはスケジュール明けてたのに食事の約束を無断キャンセルされたんだから、レバノンとかで会ったらおごってくださいよ!
最後に、カルロス・ゴーンの復活
最後にゴーンさんの過去の発言をご紹介します。
◆2018年4月19日、月刊「文藝春秋」のインタビュー
日本に住んでもう19年ぐらいになりますでしょうか。私がリタイアするのはいつか分かりませんが、その時でも私はやはり日本とかかわり合っていきたいと思っています。今までとは違う側面で。
日本には思い出もあるし、友達もたくさん居ます。私は人生の大きな部分をここで過ごしました。幼い時に日本で過ごした子どもたちはよく今でも日本に来ています。日本の文化との間に絆があります。日本はまさに私の人生の一部です。
◆2003年7月24日、ルノー本社でのインタビュー
さらに、こうも言った。「私が日産に行く前に出会ったすべてのことは、日産再建のための準備だったという気がしました」。
つまり、ミシュランやルノーでの体験は「再建が不可能だと判断され、すでに2回も再建に失敗し、決して成功しないといわれていた日産の再建のための準備だった」と。
もちろんリップサービスもあるでしょう、事件ではホリエモン曰く「せこい」グレーなこともしたのでしょう。
でも、ゴーンさんは1999年から家族とともに日本に移住、日本になじむように努力しながら日産の為に尽力してくれた恩人です。
1999年、あと数ヵ月で倒産とまで言われていた日産を「達成できなけらば辞職する」と不退転の決意で経営再建に挑み、日産を救いました。
そんな外国から日本の為に来てくれた功労者に対して、微妙な事件で勾留し、家族にも会えない、仕事の関係者にも会えない状況にして、国外逃亡にまで追い込む。
「それはないんじゃない?」と思ってしまいます。
円満に日産を退社すれば、大恩人として称えられていたはずです。それをすべて捨てて逃亡したゴーンさんの無念はすさまじいモノがあるでしょう。
これでは今後日本を助けようとする海外の経営者など現れないのではなくなってしまいます。
ブロックチェーンなどのIT技術の進歩により、国に依存しない仮想通貨などグローバル化どころか国の存在意義が問われてきています。
刑事司法がこの国のリスクであることが知れ渡れば、お金も人材も日本から離れて行ってしまいますよね。今回の事を契機に変わっていってくれることを願っております。
ただ、ゴーン氏に関してホリエモンは次のように予言しています。
ゴーンはしつこい、執着心、実行力がある。僕にもこんな逃亡劇はできない。彼ほど有能であればレバノンでまた実績を作り、名誉を回復するでしょう。
日本人なんて全世界70億人のたった1億人で、世界を席巻している英語圏でもない。ぜひ気にせず活躍してほしい。
今回、本記事や関連記事の作成を通じてそのパワーに触れ、私もそうなるだろう、そうなってほしいと思うようになりました。
ホリエモン記事一覧
カルロスゴーン関連記事
日本政府の司法制度が世界から評判が悪いのはわかったけど、なんかすっきりしないな。ゴーンに都合が良すぎるんじゃないの?
そのように思われる方は、別記事から別の視点で事件を見てみてください。
次の記事は、ゴーンの生い立ちからブラジル・アメリカ時代、そして日産復活のヒーローから転落(逮捕・逃亡)までの経歴を時系列でまとめています。
ゴーンの経歴が分かると事件の背景がわかってきますよ。
次の記事では、日産の内部調査から始まる事件の経緯を時系列でまとめ、真相に迫っています。
また、類似ケースであるホリエモンが逮捕されたライブドア事件を知るとゴーン事件がより見えてきますよ。
参考資料
本記事作成にあたり次のサイト・本を参考にさせていただきました。
◆書籍:
カルロス・ゴーン 国境、組織、すべての枠を超える生き方
◆WEBサイト:
刑事裁判を考える:高野隆@ブログ
◆YouTube:
ホリエモンチャンネル:カルロス・ゴーン、行ってらっしゃい!おすすめ
7回以上に渡りホリエモンがゴーン事件を解説しています。テレビでは絶対言えない個人を指定した批判も満載で、スカッとします。
カルロス・ゴーン被告が記者会見 逮捕に関与した日産関係者の実名公表
- 本カテゴリの記事は基本的に主人公寄りで書いています。
- 極力資料に基づき記載していますが、会話の内容など一部脚色しています。
(おしまい)